音楽理論の本当の話
今回、私は音楽理論の解説をする。しかし、音楽理論は、音楽の表面的なことを整理するのに役に立つ事柄であるが、音楽の総てではない。
大事なのは、奥にある何か、である。それは、「歌の心」と同じものである。
○実践編
ロック、ジャズ、フュージョン、テクノ、色々な種類の音楽において、音が多いコードや複雑なコードが使用されている。
現代の音楽家は、それらのコードを当たり前のように使っているのかもしれない。
4音以上で構成される音が多いコードや構成が複雑なコードを使う場合には、注意が必要である。
コード進行の都合においても、考えるべきことは増えてしまう。
代理コードの使用も考えると、最良のコード進行を見つけ出すのは、非常に難しい。当然、人によって意見も違う。
また、代理コードは、あくまでも代用のコードであり、完全な本物ではないので、使えば悩む理由は増えていく。
作っている曲が複雑であれば、尚更である。
ジャズは、楽しい感じになれば良いので、不協和音のコードでも積極的に使っていこうと考える、そういう音楽である。
ロックでは、それが面白い音だと思えれば歓迎される。
より単純な問題もある。
ロックの曲を書いていても、テンションの付いたコードを中心的に使えば、ジャズのようなサウンドになってしまう。
ジャズのようなサウンドのロックは、ロックと言えるのか、よく分からない。
また、ハード・ロックのように強い乗りのジャズは、ジャズではないように思える。
もし、まったく新しい音楽を作り出せれば、それは素晴らしいことである。
世の中には、不協和音という言葉がある。
それは、五線譜で隣の高さの音、つまり、半音の2度や全音の2度の音程の、音の組み合わせである(オクターブが違う音も含む)。
要するに、狭い間隔で複数の音が鳴ると、うるさいと感じて気分が悪くなる、ということである。
また、別の種類の不協和音として、増4度と減5度も、ある。
これは、あくまでも、不協和音と呼ばれる、という話であって、コードには、それぞれに独特の響きがあるし、世の中には不協和音が好きな人もいるのである。
要するに、使い方が重要なのである。
純正律は、特定の音を起点にしてより美しいハーモニーを求める調律である。しかし、平均律は、サイクルになっていて、そして、総ての音に個性がある音律なのである。
大抵の場合、不協和音は、経過音などの装飾的な音として使われる。コードに収める場合には、工夫が必要である。
また、全音でも半音でも、間隔の狭い不協和音を使うと、同時に違うコードの音が鳴る形になるので、その効果について考える必要がある(害がある場合には、アヴォイド・ノートと呼ばれる)。
ここで、不協和音の程度の順序について考えてみる。
不味い音を鳴らしているのだから、無益に近いとも思えるが、使うためには必要なので、少し考えてみよう。
1 全音2度の2音
2 半音2度の2音(アヴォイド・ノートと呼ばれる)
3 全音2度で3音
4 上下の両側が半音程の3音のアヴォイド・ノート
5 全音2度で4音
6 4音以上の半音程のアヴォイド・ノート
7 全音2度で5音以上
この順序で、より酷くなっていくのではないだろうか。
また、3音以上で半音程と全音程の両方が組み合わさった場合、2種類の不協和音が鳴るわけだから、それもまた酷いということになる。
アヴォイド・ノートを避ければ済む問題ではないようだ。
実は、アヴォイド・ノートの使用は、認められているのである。
半音の音程であるから、音色のブレの範囲に近いとも言える。
全音のトリルだけでなく半音のトリルもあるし、ギターでは、チョーキング・トリルも使われる。
ギターでは、ハーフ・チョーキングが重要な技として使われている(クォーター・チョーキングも使われる)。
色々な楽器で、ビブラートの技も使われるし、スライドやグリッサンドにおいては滑らかな経過音が鳴るので、そこに含まれている。
実は、半音の音程のアヴォイド・ノートは、好まれる音なのである。
ただし、アヴォイド・ノートを使う際には、工夫が必要である。
アヴォイド・ノートの一方を強めるか、もう一方を弱めるか、どちらかが必要である。
そうでなければ、特にサウンドに刺激を加えたい時だけに使う。
そして、普通は、両側が半音程の三つの音は、特に理由が無ければ使わない。さすがに、両側が半音程の三つの音は、印象が強過ぎると言えるだろう。
不協和音の場合以外にも、多くの音が同時に鳴る場合の工夫も、必要である。
例えば、5音以上が同時に鳴る場合、中央の音を弱めれば、上の塊と下の塊に分割できて、響きが分かりやすくなる。
もしくは、上か下のどちらかの音程を狭く、もう一方を広くすれば、響きに方向性を持たせることができる。
あえて多くの音を平均的に鳴らす場合もあるだろう。
色々な工夫が考えられるだろう。
スケール全体の不協和についても、考えなければならない。
転調によって複数のスケールを使う場合、スケールとスケールは、ずれているので、当然、曲の全体の中では不協和音が鳴っているのと同じになってしまう。
転調だけでなく、同じ音程に関して複数のスケールのコードを使う場合、それは一時的転調に近いので、多重サイクルを使っている形になる。
この場合も、スケール全体が、ずれて響くことになる。
Cメジャーのスケールに、♯や♭を付けたり音を抜いたり始点を変えたりすると(上りと下りで形が違う場合もある)、新しいスケールが出来上がる。
そういう改造スケールを使う場合もある(それが古典的な伝統的スケールと一致する場合もある)。
そして、改造スケールの上には、改造コードが出来上がる。また、順序が逆で、使う改造コードに合わせて改造スケールを作る場合もある。
これらの要素は、多くの場合に、名前にオルタードを付けて呼ばれる。
オルタード・コード、オルタード・スケール、などである。
オルタード・コードを使う場合は、別の形のスケールを参考にして音を持ってくる場合もあるようだ。
改造スケールや改造コードを使う場合には、考えるべき都合も変化してくる。
作曲する際には、使うスケール全体の響きも制御して、望む響きを得るのである。
○ 奇妙な説明
より詳しく説明すると、奇妙な話になる場合がある。
・「アヴォイド・ノートは、使い易い。」
アヴォイド・ノートの中でも、上下の両側が半音程の三つの音は、不協和音であることが分かりやすいので、不協和音を鳴らしたい時には、非常に有効である。
また、半音2度の2音のアヴォイド・ノートは、サウンドのエッセンスとして有効である。
CとF#、BとFも、同じであろう。
・「弱起は、強い。」
場合によっては、ド(主音)以外の音で始まるメロディーは、印象が強い。弱い拍から始まるフレーズにも、同じことが言える。だから、弱起の曲は、強い。
ただし、あくまでも、場合による。
・「ドミナントの響きは、安定している。」
コードの内の、ドミナントは、音の響きは安定している。しかし、キーの中で中間的な位置に宙吊りの形になるので、トニックなどに進行すると落ち着くのである。
そのキーの内の関係において、不安定なのである。
このように、音楽理論の中には、奇妙な言葉によって説明される事柄もある。
(引用・参考文献 今回は、特定の流儀からの引用は無し。)
Shah Roushanan(TT) (執筆 2010年1月)
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